従業員に退職金を支払う際にも源泉徴収を行う必要がありますが、一般的には勤続年数に応じた一定の退職所得控除額を控除したうえで、源泉徴収税額を計算することとなります。今回は、勤続年数1年未満の従業員に退職金を支払う際の退職所得控除額はいくらになるのかを源泉徴収手続きの概要を踏まえながら解説します。
退職金を支払う際の所得税の源泉徴収手続き概要
所得税法上、役員や従業員に対して退職金を支払う際には、原則として所得税(及び復興特別所得税)を源泉徴収して、徴収した月の翌月の10日までに国に納めなければならないことと定められています。
その源泉徴収税額は、退職者から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けている場合(一般的なケース)には、勤続年数に応じた「退職所得控除額」を退職金支給額から控除したうえで、源泉徴収税額を計算することとなります。
一方で、その申告書の提出を受けていない場合には、退職金の支給額に一律で20.42%の税率を乗じて計算した金額となります。
勤続年数の計算方法
上記の退職所得控除額を計算する場合の勤続年数の計算については、1年未満の端数を生じたときは、これを1年として勤続年数を計算すると所得税法上で定められています。
このため、勤続年数が1年未満の場合には、勤続年数を1年として、退職所得控除額を計算することとなります。この際、原則的には40万円に勤続年数を乗じて計算した金額が退職所得控除額となりますが、計算した金額が80万円に満たない場合には、80万円とすると定められています。
よって、勤続年数1年未満の従業員に退職金を支払う際の退職所得控除額は、退職所得の受給に関する申告書の提出を受けることで80万円となります。
なお、退職金を支給した従業員に対しては、源泉徴収税額が0円であっても会社から「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」を発行することが必要となりますので、ご留意ください。
(参考)退職所得控除額の計算表
勤続年数(=A) | 退職所得控除額 |
20年以下 | 40万円×A(80万円に満たない場合は80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(A-20年) |
関連する条文・通達
所得税法第30条
3 前項に規定する退職所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 政令で定める勤続年数(以下この項及び第七項において「勤続年数」という。)が二十年以下である場合 四十万円に当該勤続年数を乗じて計算した金額
二 勤続年数が二十年を超える場合 八百万円と七十万円に当該勤続年数から二十年を控除した年数を乗じて計算した金額との合計額
所得税法第199条
居住者に対し国内において第三十条第一項(退職所得)に規定する退職手当等(以下この章において「退職手当等」という。)の支払をする者は、その支払の際、その退職手当等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
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