皆さんは「実質的支配者」という言葉に馴染みがありますか?金融機関等との取引の際に耳にしたことがある方もいるかと思います。
昨今、公的機関において法人の実質的支配者(BO:Beneficial Owner)に関する情報を把握することについては、法人の透明性を向上させ、資金洗浄等の目的による法人の悪用を防止する観点から、国内外の要請が高まっています。
そこで今回は、実質的支配者の把握についての取組の一つとして創設された「実質的支配者リスト制度」について解説します。
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実質的支配者とは何か
実質的支配者(Beneficial Owner:以下BO)とは、法人の議決権の総数の4分の1を超える議決権を直接又は間接に有していると認められる自然人等をいいます。
具体的には以下のケースが一般的です。
(1)会社の議決権の総数の50%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人(この者が当該会社の事業経営を実質的に支配する意思又は能力がないことが明らかな場合を除く。)
(2)(1)に該当する者がいない場合は、会社の議決権の総数の25%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人(この者が当該会社の事業経営を実質的に支配する意思又は能力がないことが明らかな場合を除く。)
※「間接に有する」とは、例えば、自然人Aが甲株式会社の株主である乙株式会社を介して(Aは乙株式会社の50%を超える議決権を有する株主として)間接的に甲株式会社の 議決権のある株式を有していることをいいます。
実質的支配者リスト制度(BOリスト制度)」とは何か
実質的支配者リスト制度とは、株式会社(特例有限会社を含む。)からの申出により、商業登記所の登記官が、当該株式会社が作成した実質的支配者リストについて、所定の添付書面により内容を確認した上でこれを保管し、登記官の認証文付きの写しの交付を行う制度です。
なお、ここでいう実質的支配者リスト(実質的支配者情報一覧)とは、実質的支配者について、その要件である議決権の保有に関する情報を記載した書面をいいます。
実質的支配者リストを商業登記所に申し出る際の手続
実質的支配者リストを申し出る際には、作成した当リストの他、「申出書」「申出日における株主名簿写し」が必要となります。このとき、当リストの記載と「申出日における株主名簿写し」の記載が合致しない場合は、その理由を記載した代表者作成の「合致していない理由を明らかにする書面」が必要となります。
この他にも、必要な場合は「実質的支配者の支配者の本人確認書類」(運転免許証の両面コピー、住民票の写しなど)、「支配法人(実質的支配者が議決権の総数の50%以上を有する法人)の申出日における株主名簿」を添付することになります。
また、申出書(又は委任状)に押印した印鑑が登記所に届出している会社実印以外の場合には、申出会社の代表者の氏名・住所が確認できる本人確認書類(運転免許証の両面コピー、住民票の写しなど)も必要となります。
実質的支配者リスト制度の関連情報
実質的支配者リスト制度の創設についての詳細は、以下の法務省のページをご参照ください。
実質的支配者リスト制度の創設について(法務省)
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