個人事業者が事業を廃止した後に、事業で使用していた商品や車両などを私用として転用するケースは多々ありうるかと思います。
今回はこういった場合の「転用」が消費税法上のみなし譲渡に該当するかどうかについて、具体例を紹介しながら検討していきます。
個人事業における消費税法上のみなし譲渡とは
個人事業者が棚卸資産又は棚卸資産以外の資産で事業の用に供していたものを家事のために消費し、又は使用した場合におけるその消費又は使用は、消費税法上では事業として対価を得て行われた資産の譲渡とみなす(みなし譲渡)と定められています。
つまり、消費税課税事業者である個人事業者が事業用資産を私用のものに転用した場合には、それが非課税取引に該当しない限り、消費税の課税対象となるのです。
個人事業者が事業を廃止した場合の事業用資産の取扱い
個人事業の廃止に伴い事業用資産に該当しなくなった商品・車両等の資産は、原則として事業の廃止時において家事のために消費または使用したものとして、上記のみなし譲渡を行ったものとして取り扱うこととされています。つまり、消費税の課税対象となるということです。
なお、消費税法上のみなし譲渡の場合における消費税の課税標準については、事業の廃止時におけるその資産の通常売買される価額(時価)に相当する金額を対価の額として、その事業を廃止した日の属する課税期間の課税標準額に含める必要があることとされています。
個人事業者が事業を廃止した場合の具体例
【ケース】
個人事業者Aが廃業に伴い、商品配送用に使用していた車両を個人の私用車として転用した場合、消費税法上のみなし譲渡に該当するか。
【回答】
個人事業の廃業に伴う事業用車両の私用車への転用は、上記で述べた通り消費税法上のみなし譲渡に該当するので、事業廃止の日の属する課税期間に係る消費税の申告の際に当該譲渡分を含めて計算する必要があります。
因みに消費税簡易課税制度を選択適用している場合には、事業用資産の譲渡であることから、簡易課税制度上の事業区分は第4種事業に該当します。
消費税法上のみなし譲渡に関連する条文・通達
消費税法第28条第一項(一部略)
課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額を含まないものとする。)とする。
消費税法基本通達13−2−9(固定資産等の売却収入の事業区分)
事業者が自己において使用していた固定資産等の譲渡を行う事業は、第四種事業に該当するのであるから留意する。
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