税務

消費税の事業廃止届と簡易課税制度選択届出書の取扱いについて

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消費税の事業廃止届と簡易課税制度選択届出書
事業を始めるときと同様に、事業をやめようとする際も各種届出書を役所等の関係機関に提出しなければなりません。今回は消費税法上における事業を廃止した際の届出書について、簡易課税制度を選択していた場合の例と絡めて紹介いたします。

事業を廃止した際の消費税法上の届出について

消費税法では、事業者が事業を廃止した場合には、原則として、その事業者はその旨を記載した届出書(事業廃止届出書)を速やかにその事業者の納税地を所轄する税務署長に提出しなければならないと定められています。

消費税簡易課税制度選択届出書を提出した事業者が事業を廃止した場合

消費税法上、消費税簡易課税制度選択届出書を提出した事業者は、その適用を受けることをやめようとするとき、又は事業を廃止したときは、その納税地を所轄する税務署長に、その旨を記載した届出書を提出しなければならないと定められています。

また、その届出書の提出があったときは、原則として、その提出があった日の属する課税期間の末日の翌日(翌課税期間の開始の日)以後は、消費税簡易課税制度選択届出書はその効力を失うと定められています。

なお実務上、事業廃止届出書の提出があった場合には、消費税簡易課税制度選択不適用届出書の提出があったものとして取り扱われています。同様に「消費税課税事業者選択不適用届出書」に、事業を廃止した旨を記載して提出した場合には、他の不適用届出書等及び事業廃止届の提出があったものと取り扱われます。
(詳しくは事業廃止届出書の記載要領等参照)

消費税の事業廃止届の提出があった場合の具体例

【ケース】
個人事業主(消費税課税事業者で、消費税簡易課税制度選択届出書を提出済)が法人成りしてその個人事業を令和5年9月30日に廃業したことに伴い、令和5年10月31 日に、所轄税務署に(消費税)事業廃止届出書を提出した。

この場合、その個人における消費税簡易課税制度選択届出書の効力はどのように取り扱われるか。なお、上記届出書以外の消費税法上の届出書(消費税簡易課税制度選択不適用届出書など)の提出は行っていない。

【回答】
令和5年10月31日に事業廃止届出書が提出されているため、令和5年10月31日に消費税簡易課税制度選択不適用届出書の提出があったものとして取り扱われる、

そのため、当該提出があった日の属する課税期間の末日の翌日である令和6年1月1日から、消費税簡易課税制度選択届出書の効力は失われるものと考えられる。

本項に関連する裁決・条文・通達

国税不服審判所平成17年1月7日裁決(事例要旨)
請求人は、事業廃止届出書の提出がなかったとしても、事業の廃止という事実が否定されるものではないから、消費税法第37条第2項に規定する事業廃止届出書提出の有無にかかわらず、事業を廃止した日の属する課税期間の末日の翌日に、簡易課税制度選択届出書の効力は喪失すると解すべきである旨主張する。

しかしながら、消費税法第37条第2項及び同条第4項には、簡易課税制度を選択した事業者が事業を廃止した場合は、事業廃止届出書を提出しなければならず、当該届出書が提出された日の属する課税期間の末日の翌日以後、簡易課税制度選択届出書の効力が失われると規定されているのであるから、簡易課税制度選択届出書の効力が喪失するのは、事業廃止届出書の提出があった日の属する課税期間の末日の翌日と解するほかないというべきであり、消費税法第37条第2項に規定する事業廃止届出書を提出しない限り、事業を廃止した日の属する課税期間の翌課税期間以後も、簡易課税制度を適用しなければならないこととなる。

請求人は、いずれも消費税法第37条第2項に規定する事業廃止届出書等と認められる「簡易課税税制度選択不適用届出書」及び「事業廃止届出書」を平成14年8月30日に提出しており、これらの届出書はいずれも、本件各課税期間の開始の日の前日までに提出されていないことから、本件各課税期間については、本件簡易課税制度選択届出書の効力は存続しているものといわざるを得ない。

したがって、請求人の主張は、消費税法第37条第2項及び同条第4項の解釈上、採用することはできない。

消費税法第37条(一部略)
事業者が、その納税地を所轄する税務署長にその基準期間における課税売上高が五千万円以下である課税期間についてこの項の規定の適用を受ける旨を記載した届出書を提出した場合には、当該届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間については、第三十条から前条までの規定により課税標準額に対する消費税額から控除することができる課税仕入れ等の税額の合計額は、これらの規定にかかわらず、次に掲げる金額の合計額とする。この場合において、当該金額の合計額は、当該課税期間における仕入れに係る消費税額とみなす。

③第1項の規定の適用を受けようとする事業者は、次の各号に掲げる場合に該当するときは、当該各号に定める期間は、同項の規定による届出書を提出することができない。ただし、当該事業者が事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間から同項の規定の適用を受けようとする場合に当該届出書を提出するときは、この限りでない。

一 当該事業者が第9条第7項の規定の適用を受ける者である場合 同項に規定する調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日から同日以後3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までの期間
二 当該事業者が第12条の2第2項の新設法人である場合又は第12条の3第3項の特定新規設立法人である場合において第12条の2第2項(第12条の3第3項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)に規定する場合に該当するとき 第12条の2第2項に規定する調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日から同日以後3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までの期間
三 当該事業者が第12条の4第1項に規定する場合に該当するとき(前2号に掲げる場合に該当する場合を除く。) 高額特定資産(同項に規定する高額特定資産をいう。以下この号及び次号において同じ。)に係る同項に規定する高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日から同日(当該高額特定資産が同項に規定する自己建設高額特定資産である場合にあつては、当該自己建設高額特定資産の建設等(同項に規定する建設等をいう。同号において同じ。)が完了した日の属する課税期間の初日)以後3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までの期間
四 当該事業者が第12条の4第2項に規定する場合に該当するとき(前3号に掲げる場合に該当する場合を除く。) 高額特定資産である棚卸資産若しくは課税貨物又は同項に規定する調整対象自己建設高額資産について前条第1項又は第3項の規定の適用を受けた課税期間の初日から同日(当該調整対象自己建設高額資産の建設等が調整適用日(これらの規定に規定する場合に該当することとなつた日をいう。)の前日までに完了していない場合にあつては、当該建設等が完了した日の属する課税期間の初日)以後3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までの期間

④前項各号に規定する事業者が当該各号に掲げる場合に該当することとなつた場合において、同項第1号若しくは第2号に規定する調整対象固定資産の仕入れ等の日、同項第3号に規定する高額特定資産の仕入れ等の日又は同項第4号に規定する調整適用日の属する課税期間の初日から同項各号に掲げる場合に該当することとなつた日までの間に第1項の規定による届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出しているときは、同項の規定の適用については、その届出書の提出は、なかつたものとみなす。

消費税法第57条
事業者が次の各号に掲げる場合に該当することとなつた場合には、当該各号に定める者は、その旨を記載した届出書を速やかに当該事業者の納税地を所轄する税務署長に提出しなければならない。
一 課税期間の基準期間における課税売上高が千万円を超えることとなつた場合(第九条の二第一項、第十条第一項若しくは第二項、第十一条又は第十二条第一項から第六項までの規定により消費税を納める義務が免除されなくなつた場合を含む。) 当該事業者
二 課税期間の基準期間における課税売上高が千万円以下となつた場合(次号に掲げる場合に該当する場合並びに第九条第四項の規定により届出書を提出している場合及び次条第一項の登録を受けている場合を除く。) 当該事業者
二の二 第十二条の四第一項から第三項までの規定の適用を受ける課税期間の基準期間における課税売上高が千万円以下となつた場合(第九条第四項の規定により届出書を提出している場合及び次条第一項の登録を受けている場合を除く。) 当該事業者
三 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が事業を廃止した場合(既に同条第五項、第十九条第三項、第三十七条第五項、第四十二条第九項又は第四十五条の二第二項の規定により事業を廃止した旨を記載した届出書を提出している場合を除く。) 当該事業者
四 個人事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される者を除く。)が死亡した場合 当該死亡した個人事業者の相続人
五 法人(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される法人を除く。)が合併により消滅した場合 当該合併に係る合併法人

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TAKASUKA/
中小企業診断士/転職4回を経てコンサルティング会社を起業/趣味はゴルフ観戦(推しは吉田優利・吉田鈴姉妹/趣味が高じて、スポンサーを必要とする(プロ)ゴルファーと選手の支援を通じて社会貢献や認知度をアップさせたい企業とのマッチング事業を開始