財産債務調書制度とは、所定の提出要件に該当する場合に、毎年12月31日において有する財産の種類、数量及び価額並びに債務の金額その他必要事項を記載したものを確定申告書とは別に、翌年の3月15日までに提出しなければならない制度です。
財産債務調書制度は先般の税制改正によって大きく見直しがありました。今回はその改正内容について解説しています。
従前の財産債務調書制度
従前の財産債務調書制度では、所得税の確定申告書を提出すべき者や一定の還付申告書を提出できる者で、申告書に記載すべきその年分の総所得金額及び山林所得金額の合計額が2,000万円を超え、かつ、その年の12月31日において、その価額の合計額が3億円以上の財産又はその価額の合計額が1億円以上の国外転出特例対象財産を有する場合には、その者の氏名、住所又は居所及び個人番号並びにその者が同日において有する財産の種類、数量及び価額並びに債務の金額その他必要な事項を記載した財産債務調書を、確定申告書とは別に、原則としてその年の翌年の3月15日までに、その者の所得税の納税地の所轄税務署長に提出しなければならないと定められていました。
令和4年度税制改正による財産債務調書制度の改正内容
これに対し、令和4年度税制改正では、上記の財産債務調書制度について以下の見直しが行われました。
①財産債務調書の提出義務者について、現行の財産債務調書の提出義務者のほか、その年の12月31日において有する財産の価額の合計額が10億円以上である居住者を提出義務者とすること(令和5年分以後)
②財産債務調書の提出期限について、その年の翌年の6月30日とすること(令和5年分以後)
③提出期限後に財産債務調書が提出された場合において、その提出が調査があったことにより更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは、その財産債務調書は提出期限内に提出されたものとみなす措置について、その提出が調査通知前にされたものである場合に限り適用することとする(財産債務調書が令和 6年1月1日以後に提出される場合について適用)
④財産債務調書への記載を運用上省略することができる「その他の動産の区分に該当する家庭用動産」の取得価額の基準を現行の100万円未満から300万円未満に引き上げるほか、財産債務調書の記載事項について運用上の見直しを行うこと(令和5年分以後)
まとめ
財産債務調書制度について令和4年度税制改正の内容を中心にまとめました。
改正内容について正確に把握し、提出書類の漏れがないように留意しましょう。
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